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ポップカルチャー偏愛記

なんだかんだで結局J-POPにどっぷり浸かり救われながら日々を送る28歳女子の、切々たる日々に触れるすべてのポップカルチャー(主にジャニーズ)についての記録

「ピンク・シャドウ」の官能

妹が奇跡的にチケットを手に入れることの出来た2014年の山下達郎「マニアック・ツアー」に向けて、TSUTAYAで自分たちが持っていないアルバムを借り占めたわたしは、

一度に大量のアルバムをPCに取り込んでしまうと、それ全部を聴くのが億劫になってしまって未聴のまま長いこと放っといてしまう

というマーフィーの法則にやっぱりそのときもきちんと従って、何枚か聴かずに眠らせておいた。コンサートの10日ほど前に、妹に、78年のアルバム「IT'S A POPPIN' TIME」にすごいカッコイイ曲があるよね、と教えてもらったのがきっかけで、わたしはその曲を知った。

アレンジの「大人感」とヤマタツのソウルフルかつよどみない歌声(それはいつもか)に、こんなの聴いたことない、とんでもないポップ・ソウルだ、と震え上がり、わたしたちはその曲に夢中になった。ありがたいことにツアーでも歌ってくれたので、わたしと妹は、生「ピンク・シャドウ」を聴いたことのある、日本でも数少ない(だろうと思われる)幸運なU-30のうちのひとりとなったわけだ。

 

そして何故今日になってその曲のことを書いているかというと、その曲が実はヤマタツのオリジナルではなく、ブレッド&バターという聞いたこともないグループの曲だった、ということを知ったからだ。

ピンク・シャドウ/ ブレッド&バター - YouTube

 

上記音源を聴く前、こういう場合ってだいたいカバー元の曲は“もったり”してることが多いんだよな、と自分の経験からある程度予測していて(と、自分で言っておきながら“もったり”が何を意味しているのかはよく分からない。これが“レイドバック感”なのか?)、イントロを聴いたときに、あ、やっぱり、と思ったが、オルガンとギターがかっこいい(その音はわたしにとっていかにも“シティポップ”という感がある)。そして大仰なギミックもなくさらりとボーカルが入ってきた瞬間、1テンポ開けてわたしは叫んだ。

あまりにモダンだ。

鼻にかかったような、舌足らずなような、少しかすれたような、“脱力系”とでも言おうか、ちょっと原田真二フィッシュマンズ佐藤伸治、あとはハナレグミ永積タカシらを思い出すその声は、色気と知性があって、どうしようもなく官能的である。

ブレッド&バターによる「ピンクシャドウ」の官能は、山下達郎による「ピンクシャドウ」の隅々まで完璧に計算尽くされた世界の、きらびやかかつ緊張感のある「大人」的な官能とは質が異なっていて、もっと生々しく、なんとなく「ベッドルーム・ソウル」(そんな言葉があるのなら)とでも呼びたい官能である。

 

そんなことを言ってるうちに思い出した曲がある。「夢の匂い」だ。

 

youtu.be

わたしが眠れない夜によく聴く曲である。そういう意味でも「夢の匂い」も「ピンク・シャドウ」と同じ「ベッドルーム・ソウル」の系譜につらなる、と言ってもいいのかもしれない(無責任)

 

そもそもどうして「ピンク・シャドウ」がヤマタツの曲ではない、と知ったかというと、一昨日くらいから読んでいた萩原健太著『70年代 シティ・ポップ・クロニクル』という本でブレッド&バターの「Barbecue」というアルバムが紹介されていて、「ピンク・シャドウ」はその収録曲なのだ。

それにしてもこの本を読んでいると、萩原健太さんに対する嫉妬に近い羨望を禁じ得ない。この本で紹介されているアルバムのうち、未聴だったアルバムについては早急に集めよう。それまではYouTubeブレッド&バターの「ピンク・シャドウ」を狂ったように聴きまくろう。

 

70年代シティ・ポップ・クロニクル (ele-king books)

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